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2012年6月20日水曜日

雷光と共に背番号21が疾駈した…この時代の名を“LT”と呼ぶ。

今月18日、“LT”こと元SDおよびNYJのRBラダニアン・トムリンソンが引退した。

いやぁ、好きだったなぁ、LT。
SDというチームはどうしてもあまり好きになれないのだが、LTだけは別格だった。




史上最強のRBは?というと、必ずその候補に名前が挙がる。
案の定と云うべきか、NFL.comでもニュースにしている。
(NFL JAPAN.comの訳はこちら → 引退したLTはランクイン?RB歴代トップ10 -前編- および -後編-
記事では9位にランクインしているLTだが、個人的にはもっと上、ベスト5には入ると思う。
まぁ、NFLを見始めたのが'90くらいからだから、1位のRBジム・ブラウンは兎も角、RBウォルター・ペイトン等も現役時代は知らないから、リアルタイムで衝撃を受けた選手が上に来るのは自然だわな。

現役時代を知っていて最強と思えるのは、純粋にラン能力だとやっぱりRBバリー・サンダース。
ワンバック体型からブロッカー無しで相手守備陣を切り裂いたDETの“シルバーストレッチ”は、彼の天賦の才が無ければ成立しなかったと思う。
カットのキレやギアチェンジの回転比は、人間業とは思えなかった。
耐久性や安定感、チームを勝利に導く能力からすると、RBエミット・スミスかな。
何だかんだ言って、史上最多の18,355ydsを稼いだランナーだし。

だが、RBトムリンソンが持ってた能力は、RBとしての枠を大きく逸脱して、別次元のポジションでプレイしているような驚愕に溢れた選手だった。
RBでありながら、通算パスレシーヴ624回、4,772yds、17TD。
例えば、プロボウル3回出場の元NOのWRジョー・ホーンが通算レシーヴ603回なので、並のWRでは比にならない。
加えて、パスも12回投げて8回成功(66.7%)、143yds、7TD、QBレイティングは驚異の146.9。
2005年のOAK戦では、ラン・レシーヴ・パスの全てでTDを記録するという極レアな活躍も見せた。

レッドゾーンの最終兵器としか言いようが無い。
高校まではLBだったと言うし、守備選手としてプロ入りしてたとしても、それなりの成績を残したかも。


ここで一旦、彼の経歴と成績を振り返ってみたい。
小生如きが改めて触れるまでもないのだが、数字を見ることでその偉大さが際立つプレイヤーでもあることだし。

ラダニアン・トムリンソン(LaDainian Tomlinson)
1979年6月23日、テキサス州ローズバッド生まれ。

当時は弱小校であったテキサスクリスチャン大学で、通算5,263yds獲得等の記録を残し、チームを41年振りのボウル・ゲーム勝利に導く大活躍。
4年時には2,158yds、22TDを挙げる活躍で、ハイズマン賞(大学最優秀選手)選考票4位となった。

2001年のドラフトでSDの1巡目全体5位指名を受けNFL入り。
彼より上位で指名されたのは、順にATLのQBマイケル・ヴィック、ARIのPTレナード・デイヴィス、CLEのDTジェラルド・ウォーレン、CINのDEジャスティン・スミス。
結構現役で活躍している選手も多い当たり年の2001組だが、後の10年のチーム状況を見ると、何処もRBトムリンソンを獲っておけば、と思える。
RBとしては、23位でNOがRBデュース・マカリスター、27位でMINがRBマイケル・ベネットを1巡指名しているが、振り返ってみればその差は歴然だなぁ。
ちなみに、SDの2巡目全体32位指名は、現NOのQBドリュー・ブリーズ。
この年のSDのフロント陣は、一生誇って良いと思う。

果てさて、プロ入りを果たしたLTは、新人ながら先発RBの座を掴み、いきなり1,236yds、10TDを挙げる活躍を見せる。
伝説の男はこの年から、ルーキーイヤーから8年連続1,000ydsラン突破という不滅の大記録を打ち立てることになる。

2003年には、ラン1,645yds、13TD、パスレシーヴ100回、725yds、TDで、史上初の1,000ydsラッシュと100レシーヴを同時記録。
この年のSDは、パッサーは若き日のQBブリーズでありながら、レシーヴ2位がWRボストンの70回、3位がTEゲイツの24回であるから、如何にLTにおんぶに抱っこであったかが窺い知れる。

2006年には、ラン348回で1,815yds、28TD、レシーヴ56回、508yds、3TDで、 計31TDと186得点のNFL年間最多得点記録を樹立。
これは現在もなお破られていない大記録である。
当然のように、この年のリーグMVPも獲得した。

LTの活躍は続きながら、チームも毎年地区優勝を果たしながら、それでもSDはプレイオフで勝ち残ることはなく、スーパーボウルの夢は毎年儚く消えて行き、そしてLTは消耗を続けて行く。
栄光の日々も長くは続かず、年齢的な衰えに加え、2007年1月の左膝負傷など、RBとして致命傷となりかねない故障も相次ぐ。

そして、成績低下とチームの若返り政策もあり、 2010年3月にSDを解雇された。
NYJに拾われ、強力守備陣と若きエースQBサンチェスを擁する新天地にスーパーボウルへの夢を托したが、叶うことなく契約の2年を満了。
昨季のラン成績は、自己最低の280yds、1TDに終わった。

FAとなり、未だ果たせぬスーパーボウルの夢舞台への渇望はあったはずだが、遂に引退を決意。
その裏に、僅かであれ、SD時代の同僚であるLBジュニア・セアウの今年5月の自殺があったのではないかと思う。

通算ラン成績は、13,684yds、145TD。
前述のとおり、2006年シーズンでのラン28TD、レシーヴと合わせた31TD、186得点はいずれも史上最多。
スクリメージ獲得距離18,456yds、162TDのバーサタイルなスタッツには、彼の真価が顕れている。
リーグMVP受賞1回、最優秀攻撃選手賞1回、プロボウル選出5回、オールプロ1軍選出3回。


最近は、ドラフトでのRBの価値が急落し、下位指名やドラフト外でも活躍できる選手が多くなった。
個人技でブチ抜く能力よりも、ブロッカーとの連携やシステムとの相性が問われる時代になった。
パスレシーヴ能力やパスプロテクション能力が重視され、2人或いは3人とランナーを揃えローテ起用するチームが増え、所謂“エースRB”はその存在を喪った。
選手生命の短いNFLの世界でもとりわけ短命なRBは、消耗品として替えの利く存在に堕ちた。

そんな時代となった今現在であっても、LTがドラフト候補に居たとしたら、是が非でも獲得に疾るべき。
彼を獲れば、向こう5~10年の地区優勝が手中に収まる。
Decadeを掴める、時代を我が物にできる。
そんな男、それだけの男。


そんな、時代を制した名選手の引退に、静かに餞を捧げたい。

2 件のコメント:

  1. 全盛期のトムリンソンを見たかった。その一言につきますな。
    あ~・・・(;´Д`)ジェッツが心配だ…。というか、サンチェスが心配だ…。困った時のトムリンソンだったのに~・・・(;´Д`)大丈夫と思う?

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  2. 全盛期のLTを観るなら、引退記者会見で流れたというSD公式サイトの“LT Highlights”で如何?
    http://www.chargers.com/media-vault/videos/LT-Highlights/8c0fbb60-118b-4da1-a183-adc44c7c2120
    (コメントからのリンクはうまく行かないかも。タイトルで検索してみよう)

    NYJが大丈夫かどうかは…ちょいと検証してみましょう。
    次の記事を、請う御期待。

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